企業におけるPRの重要性とは?PRが果たす役割について

私たちが日常的に使う“PR”という言葉に、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

言葉としては「自己PR」という使い方をすることがあると思いますが、宣伝や売り込みなど、何かをアピールする時に使うことが多いのではないでしょうか。これは間違いではありませんが、PRの一部を指すことに過ぎません。

PRとは何か、そして企業がPRを活用するための基本的なポイントを解説いたします。

PRとはステークホルダーとの良好な関係を作ること

PRとは、パブリックリレーションズ(Public Relations)の略です。パブリックリレーションズとは、企業が、ステークホルダーと良好な関係を構築し、維持・強化するための活動を指します。

企業のステークホルダーとは

ステークホルダーは、企業の活動に影響を及ぼす重要な存在であり、企業はステークホルダーの要望や期待を考慮しながら経営を行う必要があり、PRによってステークホルダーとの良好な関係を構築することは至上命題です。

企業のステークホルダーには、以下のような種類があります。

株主

株主は、企業の株式を所有する個人または法人であり、企業の所有者の一部です。株主は、企業に投資をしており、企業の資金を提供することで事業活動を支援しています。株主は、企業の経営に関与する権利を持ち、株主総会での投票権を通じて企業の重要な決定に対する意見表明ができます。また、株式の売買による利益を得ることができます。企業は、株主からの投資を受け、その資金を活用して事業を展開することができます。株主と企業の良好な関係性の構築は、株式会社を経営していく上では欠かせない要素となります。

従業員

従業員は、企業の重要な資源であり、商品やサービスの製造・提供、販売、会計や人事、技術開発など、企業の各部門で働くメンバーのことです。従業員は企業の発展に不可欠な存在であり、能力やスキルを最大限に生かし、働きやすい環境を整備することが重要です。企業は、従業員の幸福感や働きやすさを追求することで、長期的な成功につながると考えられます。また、従業員の家族も企業にとっては重要なステークホルダーであると言えます。

顧客

顧客は、商品やサービスを購入することで企業に収益をもたらす個人や法人で、企業にとって非常に重要な存在です。また、顧客の満足度を向上させることで、企業の信頼性やブランド価値を高めることができます。そのため、企業は顧客のニーズや要求に応え、信頼関係を構築することが重要です。

過去に顧客となっていても現在は企業との関わりがない休眠顧客や、将来的に顧客となる可能性のある見込み顧客なども存在し、顧客の中にも複数のグループが存在します。

パートナー企業

パートナー企業は、協力して事業を展開する仕入先や提携先の企業です。受発注の関係がある場合、自社が優位に立つケースもありますが、コンプライアンスを徹底し、共に成長を目指す関係を構築することが重要です。

自治体・官公庁

企業と自治体・官公庁は、法律や政策によって影響を受ける関係にあります。企業が新しい事業を始める場合には、自治体の支援が必要であり、また、企業は地域社会に貢献することで、自治体・政治機関との良好な関係を築くことができます。災害時には、自治体・政治機関が企業に対して支援を行い、企業は危機管理を通じて信頼関係を築くことができます。

地域社会

企業は地域社会に対して、経済的・社会的・環境的・政治的な影響を与えます。地域に雇用機会を提供し、地域経済を活性化する一方で、地域の文化や環境にも影響を与えます。企業は、地域社会とのコミュニケーションを深め、地域社会のニーズや要望に応えることが求められます。企業が所在する地域の住民や団体とは良好な関係を築く必要があります。

メディア

企業とメディアの関係は、企業が広報戦略を展開する上で重要なものです。メディアは、企業の情報を広く伝えることができるため、企業は積極的にメディアとの関係を築くことが求められます。

一方で、メディアは企業の行動や情報を批判的に取り上げることもあります。企業は、メディアに対して透明性を持って情報を提供することで、信頼関係を築くことが必要です。また、企業が問題を起こした場合には、メディアによって追及されることがあります。

最近では、SNSやブログなどのインターネット上の情報発信も重要な広報戦略となっており、企業はメディアだけでなく、インフルエンサーやブロガーなど、様々な情報発信者との関係構築も必要になってきています。

競合他社

企業は、競合他社との関係を良好にすることで業界全体の発展に寄与し、自社のビジネスにもプラスの影響を与えることができます。そのため、業界団体や商工会議所などの団体を通じて、競合他社とコミュニケーションを取ることが求められます。

業界団体を通じて、業界全体の問題や課題について協力して解決することができます。また、業界内で共通の規格や標準化が行われることで、製品やサービスの品質向上や競争力の強化につながります。

さらに、業界団体は政治家や行政機関とのコミュニケーションの場としても機能しており、政策提言や調査などを通じて、業界全体の発展や問題解決に貢献しています。これらの取り組みは、競合他社との信頼関係を構築する上でも重要な役割を果たします。

PRの目標

まず、PRの目標は、企業や団体のイメージや価値を向上させることです。そのために、PR活動を通じて、社会に対して自社の存在や活動内容、ビジョンなどをアピールします。また、企業や団体が行う社会貢献活動やCSR(Corporate Social Responsibility)などをPRすることで、社会的な信頼性を高めることもできます。

また、PRは企業や団体が新しい商品やサービスを発表する際にも重要な役割を果たします。PRを通じて、商品やサービスの魅力や特徴を広く伝えることで、消費者の関心を引き、売り上げの向上につなげることができます。

PRの歴史は比較的新しいものですが、19世紀にアメリカ合衆国でアイビー・リーが基盤を築いたと言われており、鉄道会社や石油会社などの企業が、社会的批判や政治的圧力に対応するために始められました。当時は、新聞や雑誌などのメディアを通じて、企業側からの情報発信が行われることが多かったとされています。企業がメディアに向けて発表を行うようになったプレスリリースも、この時期から活用されるようになりました。しかし、20世紀に入ると、広告やマーケティングと組み合わせた手法が用いられるようになり、PRの手法も多様化しました。現代では、インターネットやSNSの普及に伴い、PRの手法もますます多様化しています。

一方で、PRには様々な課題もあります。例えば、企業や団体が自社のみをアピールすることで、社会からの信頼を失う場合があります。また、誤解を招くようなPRを行うことで、逆効果になる場合もあります。さらに、SNSやインターネットなどで拡散される情報によって、企業や団体のイメージが大きく左右されることもあるため、適切なPR戦略が必要です。

成功するPR戦略とは

成功するPR戦略は、目的を明確に定め、的確なメッセージを伝え、適切なタイミングと媒体を選択し、計画的に実行することが重要です。以下に、具体的な成功するPR戦略のポイントを解説します。

目的を明確にする

PR戦略を立てる際には、明確な目的を設定することが大切です。例えば、製品の売り上げを伸ばすことや、企業の知名度を高めることなどが挙げられます。目的を明確に設定することで、何を達成したいのかを明確にすることができ、戦略の方向性を定めることができます。

的確なメッセージを伝える

PR戦略の中核となるのは、的確なメッセージを伝えることです。どのようなメッセージを伝えるかによって、PR戦略の成否が大きく左右されるため、十分に検討する必要があります。また、メッセージは、ターゲットとなる受け手にとって分かりやすく、共感できるものであることが重要です。

タイミングとメディアを選択する

PR戦略を成功させるためには、適切なタイミングとメディアを選択することが重要です。例えば、製品の発売前には、広告やプレスリリースを用いて、関心を高めることができます。また、SNSなどのインターネットメディアを用いて、若年層を中心にアピールすることも有効です。適切なメディアとタイミングを選択することで、効果的なPR戦略を展開することができます。

計画的に実行する

PR戦略を計画的に実行することが、成功するPR戦略を作り上げるためには不可欠です。PR戦略を実行する際には、スケジュールを設定し、タスクを明確にすることが重要です。また、プランに沿った情報発信を継続的に行うことで、効果的なPR戦略を実現することができます。

PRの手法

PRの手法は多岐に渡ります。代表的な手法としては、プレスリリースや広告、イベントやセミナーなどがあります。また、近年では、インフルエンサーマーケティングやSNSを活用したPRなど、新しい手法が次々に登場しています。

主なものを以下に紹介します。

メディアリレーションズ

メディアリレーションズは、メディアを通じて企業やブランドの認知度を高めるための手法です。メディアに対してプレスリリースや記事の提供、取材のセッティングなどを行い、メディアを通じて広く情報を発信します。

オピニオンリーダーへの働きかけ

オピニオンリーダーへの働きかけは、業界の専門家やマスコミ、著名人などの意見を通じて、製品やサービスの評価を高める手法です。オピニオンリーダーに製品やサービスを提供し、評価してもらったり、PR活動に参加してもらったりすることがあります。

ソーシャルメディアマーケティング

ソーシャルメディアマーケティングは、SNSなどのソーシャルメディアを活用して、消費者との対話を通じてコミュニケーションを図る手法です。企業がアカウントを開設し、積極的にコンテンツを発信し、フォロワーとの関係性を構築します。

コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングは、企業が制作したコンテンツを通じて、ターゲット層にアプローチする手法です。オウンドメディアやSNSなどを活用して、ユーザーが興味を持つようなコンテンツを提供し、認知度の向上や購買意欲の喚起を図ります。

ただし、PRは一方的な情報発信ではなく、双方向のコミュニケーションが重要です。企業や団体は、消費者や社会からのフィードバックや意見に真摯に向き合い、それを活かした改善や取り組みを行うことで、信頼性や認知度の向上を図ることができます。

さらに、PRは長期的な取り組みであり、継続的な努力が必要です。企業や団体は、自らが行っている活動や取り組みを正確に把握し、それをわかりやすく伝えることで、社会的な評価を高めることができます。

危機管理とPR

また、PRは、企業や団体の危機管理において非常に重要な役割を果たします。危機管理は、事前の予測・防止・対処によって被害を最小限に抑えることが目的です。PRは、危機が発生した際に、企業や団体が迅速かつ正確に情報を提供し、誤解や不安を招かないようにすることで、危機をコントロールすることができます。

企業や団体が直面する問題や批判に対応するための手段とする場合、例えば、企業が製品の品質に問題があった場合、PRを通じて正確かつ適切な情報を提供することで、消費者からの信頼を取り戻すことができます。また、企業や団体が社会的な課題に取り組む取り組みを行っている場合、PRを通じてその取り組みをアピールすることで、社会的な評価を高めることができます。

PRの重要性

PRの重要性は、現代においてますます高まっています。なぜなら、企業や団体の活動が社会課題の解決に与える影響が大きくなっており、世界中での注目度が高まっているからです。また、世界中での情報伝達が瞬時に行われるようになり、一つのニュースが瞬く間に世界中に伝わる時代となっています。そのため、企業や団体は、社会的に認められるように、常にPR活動を行う必要があります。

PRを行う上で、絶対に忘れてはならないポイントは「正確性」と「誠実性」です。PR活動を行う際には、正確な情報を伝え、誠実な態度で対応することが求められます。不正確な情報や不誠実な態度でPRを行った場合、企業や団体のイメージやブランド価値を損なうことになり、結果的には大きな損失を被ることになる可能性があります。十分に注意をして、取り組んでください。