『デジタルブランディング』とは、インターネット上でのCI(コーポレート・アイデンティティ)の確立と、デジタル・マーケティングを組み合わせたもので、企業はデジタルメディアを通じて自社やサービスの価値を提示し、ステークホルダーとの深いエンゲージメントを活かすことで信頼感を得て、ブランドの認知度やイメージを向上させる手法です。
デジタルマーケティングと混合されることがあります。デジタルマーケティングは、新しい顧客を見つけて売り上げを伸ばすことに重点を置いています。一方でデジタルブランディングの目標は必ずしも売り上げを伸ばすことだけではなく、ステークホルダーのブランドロイヤリティを高めることで、広報、採用、資金調達など全体の成長に必要な要素を高めていくことを目標にしています。
ブランドの語源
「ブランド」の語源は、放牧している仔牛が所有者の農場のものであるとわかるように焼印をつけた事から来ており、この作業を「ブランディング」と呼びました。ブランディングは所有者を明確にすると共に、他者の持ち物との違いを表すことにも有効でした。この考え方がさまざまなビジネスにも転用され、焼印の代わりにシンボルマーク、ロゴタイプ、タグ、広告ビジュアルなどの開発にも展開されるようになりました。コアとなる部分においては、商標法により保護されています。
エクスクルーシブであることが重要だった過去のブランディング
インターネットがここまで大きく普及する前の1990年代までのブランディングは、エクスクルーシブ(exclusive:排他的な,閉鎖的な、特定の人とだけ交際する)なブランド戦略に利用されるケースが多く、高級なファッションや自動車メーカーなどに活用されていました。シンプルなシンボルマークやロゴタイプと、洗練された美しいビジュアルを掛け合わせ、多くを語りすぎずに、一部の選ばれた人だけに提供されるものという印象を与える広告や店頭ディスプレイが作られ、これがブランディングであるとされました。産業が発展し、モノの供給量が急激に増え続ける中で、あえて希少性を出し、所有欲を高めることが狙いでした。テレビ、新聞、雑誌、ラジオといった一部のメディア以外で広く情報を発信する手法はなく、簡単に特別感のある情報を作り出すことができました。
しかし、2000年代に入りインターネットが急速に普及をするにつれて、ブランドの在り方が大きく変化をしていったのです。
なぜデジタルブランディングが必要なのか
デジタル・ブランディングが重要になった理由は、インターネットの普及と、デジタルデバイスの進化にあります。2,000年代前半までは圧倒的な影響力を持っていたテレビや新聞などのマスメディアを追い越して、今やデジタルメディアが大きな影響力を持つようになったのです。
信頼性は、ネット上のクチコミを見て確認する
日本で広く使われているSNSはTwitter、Facebook、Instagram、YouTube、TikTokなどがありますが、どれもグローバル規模で普及しているサービスで、世界中に情報を拡散させる規模と仕組みがあります。また、飲食店、美容院、家電、映画、コスメ、自動車などカテゴリやテーマに特化した大規模な専門クチコミサイトも多数あります。購入者が実際に商品や接客を体験した後に、即座にその感想をスマホからSNSやクチコミサイトに投稿することができ、それを多くの一般消費者やブランドのファンが閲覧しています。
その投稿の中身を企業はコントロールすることが出来ないことから信頼性が高いとされ、多くの人が企業の信頼性を確かめるために利用しています。
検索時に情報が少ないと、信頼性が低いと思われる
自分が新規で発注先を探していたり、求職者で職を探したりする際に、インターネットで検索をしても何も情報が出てこない企業を信用することはできるでしょうか。社長が誰で、本社はどこにあり、どのような活動をしている企業なのか、最低限の情報は現代の一般的な企業であればコーポレートサイトなどで公開をしています。顧客、社員、取引先などステークホルダーからのポジティブな声があれば魅力的な企業である印象を持ち、ネガティブな情報があっても多少は仕方がないと思うのではないでしょうか。
しかし、情報が一切出てこないということは、まともな事業実態がないのか、もしくは何かしら企業情報を公開したくない理由があるのではないかと考えてしまってもおかしくはありません。
経営者の顔、働く人の姿、どのようなサービスや製品を提供している企業なのかは、ステークホルダーはどのような印象を持っているのかを、一通りはインターネット上で確認ができないと、信頼できる企業という認識はされなくなってきています。
もうブランドの裏側を隠すことはできない
美しいビジュアルで広告を作り、素晴らしい接客で、顧客に高品質な製品を販売して高い満足度を得ていても、それを実現するために従業員が過酷な労働環境で働いていたり、生産の過程で騒音が出て近隣住民からクレームが出ていたりする場合があります。誰かの犠牲や不満に上に成り立つブランドは、果たして価値があるのでしょうか。
これらの問題を抱える企業は、以前であればよほどの事でない限りはマスメディアが報道することもなく、表沙汰になることがないためブランディングに影響はありませんでした。しかし、現在はSNSで当事者が簡単にスマホから発信をすることができます。内部から匿名で漏れ出したこれらの情報が、いつの間にか大きな炎上に繋がり、不買運動に発展したり、株価の急落など企業価値の低下に繋がったりするなど、ブランド価値を毀損することがあります。
生産方法が深刻な環境破壊に繋がる可能性があったり、賃金が安い国で労働力を搾取するような方法で生産して利益率を高めていたり、特定の性別の人が出世や昇給の機会を与えられないままに就業していたりすると、SDGsの取り組みに反する行為にあたり、社会から優良企業としての承認を得ることはできません。
このように、企業はブランディングのために都合の悪いことを隠して、取り繕われた都合がいい情報だけをエクスクルーシブに発信することはできないのです。
ブランディングは、エクスクルーシブからインクルーシブへ
ブランディングに重要なことは、エクスクルーシブよりも、インクルーシブ(inclusive:包括的な,誰も排除しない)に変わったのです。
社会のデジタル化が進んだことで、嘘のない、ありのままの姿を見せることが重要となりました。どうやってオープンにしていくかがデジタルブランディングを成功させるポイントとなっているのです。
まとめ
デジタルブランディングは、持続性のあるビジネスをデザインするためには、現代に企業にとって欠かせないものになりました。そして、少しでも早く取り組むべきテーマです。
効果がどのように出るかは企業によって異なりますが、継続的な活動が重要です。数値を道標に、改善を繰り返していきましょう。
レシピを活用した食品メーカーのデジタルブランディング
レシピをうまく活用することで、食品・飲料メーカーや、調理家電メーカー、食品生産者など食品関連企業のデジタルブランディングに繋げることができます。
今までに作ったレシピなども活かしながら、消費者目線に立って求められている情報を、的確にデジタルメディアを介して提供していくことがポイントです。背景から、具体策までを解説していきます。
なお、この記事の内容を実行に移すために弊社が提供する伴走型デジタルブランディングサービス『レシピン』を、本記事の後半にご紹介しております。よろしければ、ぜひご覧ください。
誰もがインターネットでレシピを調べる時代
総務省によると、インターネット利用率は13〜19歳が98.7%で、50〜59歳が95.2%となっている。そこから大きく利用率を落とす60〜69歳も84.4%は利用しており、もはや年齢が理由でインターネットを利用しない人はほとんどいなくなっています。
また、クックパッドのメディアガイドによるとスマートフォンによる時間帯別PV推移が高まるのは16時〜18時台となっており、まさに夕飯の準備をする時間です。レシピがわからないと、サッとスマホで調べていることが想像できます。
メーカーのレシピへの高い信頼感
クックパッドのようなレシピ投稿サイトには多くの一般消費者が自分の考えたレシピを投稿しています。SNSにもプロから素人まで、さまざまな人が考えたレシピが、膨大な量投稿されています。一つのレシピの調味料を知りたいだけでも、少し検索するだけで膨大な量のレシピがヒットしてしまい、何が一番いいのか迷ってしまい。
そこで期待されるのが「メーカーのレシピ」です。食に関連する企業が発信するレシピは必ず厳しい監修の元に制作をされていることが知られているため、消費者は安心して参考にすることができるのです。
しかし・・・
しかし、それだけの期待を受けて閲覧されているはずの「メーカーのレシピ」ですが、どの企業でも多く閲覧されているかというと、そういうわけではありません。
昔から食品メーカーは、宣伝や販促を目的に、広告やイベントなどの配布物にレシピを印刷してきました。レシピに工程に自社製品を盛り込めば、それを見て作りたいと思った人が自然と製品を手に取ってくれるからです。飲料メーカーも、たとえばお酒に合うおつまみのレシピを消費者に提供することで、自社製品を連想してもらうためのキャンペーンを積極的に展開してきました。調理器具には、その調理器具で簡単に作れるレシピブックを添えられており、購入後の利用をイメージできるようにしてありました。
このようにさまざまなレシピが以前から作られてきたこともあり、その流れは現代にも続いています。多くの食品・飲料メーカーのウェブサイトにはレシピが掲載されており、調理家電メーカのSNSアカウントには、調理器具で作れるレシピが紹介されています。
しかし、果たしてそのレシピは本当に消費者に届いているのでしょうか。消費者はどのようにレシピに辿り着いているのかを考察していきたいと思います。
消費者がレシピを調べる方法
レシピを知りたいと思った時、まずはスマホかPCで検索をするか、頭にパッと浮かんだレシピが掲載されているウェブサイトやアプリにアクセスして調べます。もしくは、SNSでお気に入りの料理研究家の投稿を見に行きます。
レシピ+キーワードで調べる
レシピはインターネット上では超人気コンテンツです。たとえばGoogleで12月に「白菜 レシピ」と検索されるボリュームは、月間で380万回(Googleキーワードプランナー調べ)を越えています。そこに他の食材や調味料、レシピ名、調理器具など、膨大な数のキーワードがかけ合わさって検索されています。子供のために栄養が気になる、ダイエットをしたい、賞味期限切れ寸前の食材がたくさん余ってしまったがどうすれば良いのか、レシピを調べる動機は多岐にわたりますが、これらを一度言語化して、そこからキーワードを決めて検索窓に入力しています。
するとマッチしたと思われるページタイトルと概要の一部が一覧で表示され、一番上に表示されたものから順に自分が求めているレシピと思われるものを探します。
お気に入りのレシピサイトやアプリにアクセスする
クックパッドや楽天レシピのように、ユーザー投稿型のレシピサイトは、現在も圧倒的なレシピ数が公開されており、知りたいことはサイト内を回遊していれば必ず何かしら見つけることができます。
白ごはん.comや、レタスクラブなど料理雑誌のウェブサイトは、公開されているレシピの数は限られていますが、テーマに沿って編集されたレシピを見ることができ、探しやすさが魅力です。
動画で手順を確認してから作りたい場合は、クラシルやDELISH KITCHENなど短尺動画を合わせて紹介してくれているスマホアプリが便利です。
そして、一部の大手調味料メーカーのウェブサイトは、企業が監修することによる信頼感によって、消費者からは上記のようなメディアと同等か、それ以上の評価を受けています。
お気に入りの料理研究家の投稿から探す
インターネットで検索する際にはキーワードが必要ですが、これはすでに何を食べたいかはっきりしていたり、手元に食べようと思っている食材が決まっていたりする場合で、自分の意思が明確な場合です。しかし、そこがそもそも決まっていなくて、誰かに提案して欲しいと思うこともあります。そんな時はお気に入りの料理研究家のTwitterやInstagram、YouTubeのアカウントを覗きにいきます。料理研究家にはいろいろな背景を持った人がいます。プロの調理師、有名店のシェフ、主婦から家庭料理専門家になった人、タレントや芸人などの芸能人、料理YouTuberとして活動して有名になった人もいます。王道のレシピから、独創的なレシピまで、ありとあらゆるレシピがその人のスタイルに合わせて公開されています。消費者はそこから、自分の要望に合いそうなものを選ぶのです。
企業が制作するレシピが必ず守るべき3つのポイント
1.信頼性がある
消費者が「メーカーのレシピ」に求めることは信頼性です。分量に間違いがあったり、衛生面で問題があったりするわけがないと思っています。これは十分な確認と、必要に応じた検査が必要です。食材や調理法によっては、注意書をつけたりすることも検討が必要です。
2.利便性が高い
どこのスーパーでも手に入りやすい食材を中心にして、材料費が高くなりすぎないように注意し、調理工程もできる限り最小限にするなど、消費者目線に立って工夫することで、レシピとしての利便性が高まります。調理時間を短縮できたり、洗い物が少なくなるように配慮できたりすると、繰り返し作って見ようという意欲が湧くと思います。
3.自社製品のひと回り遠くまでカバーする
売り上げだけを考えれば、当然自社製品が工程に組み込まれて、かつその魅力を引き出すようなレシピでなければいけません。しかし、これは定番の調味料や、常にレシピの中心にあるような野菜や肉などの食材でないとそもそもレシピを考えること自体が難しく、また、消費者が常に貴社の製品を手に取れるだけの販売網が確立されていることが前提条件となります。これでは限られた範囲でのニッチなマーケティング活動しか行うことができず、見込み顧客にアプローチすることもできないため、ビジネスとして成長できる幅に制限をかけてしまいます。
あくまでもデジタルブランディングが目的であり、達成すべきは、常に信頼性があり、自分達にメリットがある食の情報を、デジタル・メディアを介して提供してくれるパートナーのような存在であると、広く消費者から認知されることです。
そのためには、自社の製品から一歩踏み出して、ひと回り遠くまでカバーできるレシピを発信すべきです。もし自社製品が手に取れない人であれば、類似の製品や、代替となる食材で作ってもいいでしょう。それでも貴社のレシピでおいしい体験ができれば、それを繰り返し行えば、ブランド価値が上がり、将来的には顧客となって大切なファンとなってくれる可能性もあるのです。
レシピを活用したデジタルブランディングの具体策
さて、それではレシピを活用したデジタルブランディングに取り組む上で、どのようなことを具体策として取り組んでいけば良いのでしょうか。
レシピの棚卸を行い、レシピデータをリスト化する
まず、最初に行うことは自社内にあるレシピの棚卸です。これまでに制作したレシピがあればそれを一覧化します。そして内容や写真がどの程度揃っているかをチェックします。レシピを考えた人が違ったり、レシピに紐づく情報がバラバラになっていたりする可能性があります。それらを全てチェックして、まず完成度が高いレシピデータに整えることが重要です。そしてリストにまとめたら、次はそれをどのように発信していくか考えます。
ウェブサイトを、消費者に支持されるレシピサイトに作り替える
自社のウェブサイトには、どのような形でレシピが紹介されているでしょうか。検索にヒットしやすく、ユーザーの利便性が高いものであれば問題がありませんが、そうでない場合はリニューアルを検討しましょう。レシピを紹介するのに最適なフォーマットは、完成写真、紹介文、材料、作り方の手順、そしてそのレシピに込めた貴社の思いを伝えることです。もちろん手順を説明する写真や、調理動画があるに越したことはありませんが、必須ではありません。
そしてもう一つ大切なことは、スマートフォンで見やすくて、そして探しやすいことです。PCでレシピを調べる人も当然一定数はいますが、買い物の途中で調べたり、調理中に確認したくなったりした時には、必ずスマートフォンを使用します。スマホファーストで考える必要があります。
レシピをレシピ投稿サイトやSNSにマルチユースする
せっかくのレシピです。一人でも多くの消費者に届けるためには、レシピ投稿サイトやSNSにも公開をしていきましょう。ほとんどのプラットフォームは無料でアカウントが開設でき、自由に投稿ができるはずです。自社のブランド名やロゴを、それぞれのプラットフォームに適した形に加工して設定をしていきます。
そして、それぞれのプラットフォームが用意する分析ツールで、レシピがどの程度閲覧されたか、また実際の調理に繋がっているかのエンゲージメント率を計測していくことも忘れず行ってください。やがて傾向が見えてくると、時期やタイミングによってどのように運用をしていけばもっとレシピを見てもらえるかの打ち手が見えてくるはずです。
伴走型デジタルブランディングサービス『レシピン』
リズクでは、食品・飲料メーカー向けにレシピを活用した並走型デジタルブランディングサービス『レシピン』を提供しています。
具体的には、レシピリスト作成のサポート、レシピサイトの計画策定・デザイン・実績全般、レシピ投稿サイトやSNSなどデジタルメディアに最適化したブランドガイドラインの作成などを一括してサポートさせていただいております。コンサルタントが伴走し、デジタルブランディングに関わる全てをお任せいただけます。
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